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はとぶん

旅するゲームプロデューサーの妄想ブログ

ゲーム企画道①

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このブログも気が付いたらあまり仕事(ゲームづくり)のことに触れていないなーと思い、ここで初志を振り返ることにしよう。というわけで、何か記事ネタになるものはないかとPCの中を隅々まで漁ってみるが、いくら探しても過去に作った原案書が見つからない。どこにあるのかわからないのではなく、どうやら本当に無い様だ。開発環境の進化に伴って幾度となくPCの"お引越し"をしてきたのだが、再び見返すことのない過去のデータを持ち続けることの意味を見いだせず、どうやら途中どこかで断捨離したらしい(何となくそんな記憶も残っている…)。

 自分は1998年、まだ世界がPlay Station、SEGA SATURNNintendo64の3つに分割されている時代にゲーム業界に入った。この年の末にDream Castがリリースされているので、開発の歴史はDream Cast用ゲームから始まっている。その当時はまだ完全に書類のデジタル化が行われておらず、例えば仕様書に沿えるイメージも紙に手描きしたものをスキャンしたり、或いは印刷した紙に拡縮したコピーを張り付けて清書化していた。当時の「毎日が学園祭の前日」的な過酷な開発事情を鑑みれば、完全にデジタルデータ化できている仕様書なんて稀有な例と言えるだろう。プロジェクトの一環で作った書類がそのザマなのだから、自分の研究として起こした原案書なんてまともなモノが残っているハズが無い。不完全なモノを取っておくのも何だなーという思いで、「えいやー!」と捨ててしまったのだ。きっとそうに違いない!

 

無いものは仕方がないので、記憶に残っているものの中から1本紹介する。業界1年目の期末頃だったかな?『ソニックアドベンチャー(DC)』の開発が終わって暫く基礎研究期間が続いていた。その頃よく『スターウォーズ エピソード1』のティザーやスクショを目にしていて、未来的で疾走感にあふれているイメージをもやっと頭に描いていた。 それに影響された(というわけでもないが)、いわゆる板乗り(横乗り)で未来的な高層都市を縦横無尽に滑走するレースゲームの原案を起こした(タイトルは忘れた)。ゲームのユニークなところは、単純にプレイヤーの進行方向を操作するだけでなく、重力のベクトルを変更することでビルなどの壁面を自在に地形化して滑走できるフィーチャーだ。プレイヤーは道なき道をレースコース化してゴールを目指す。規定のコースに縛られないキャノンボール的な遊び方が楽しめるワケ。

勢いで考えたので「ゴール位置を如何に視認させるか?」とか「重力方向が変わった時にカメラはどうなるのか?」とか「他のプレイヤーとの絡みは?」とか細かいことは一切考えておらず、恐らくその当時プレゼンした上司にも「なんも考えてねーな!」と酷く怒られただろう。ちなみに何で板乗りなのかというと、自分が大学生の時によくスノーボードに行っていたから。若いころのアイディアなんて、大概過去の自分の経験から生まれてくるものですよ。まあただ何となく「カーブの遊び」じゃない、新しいレースゲームが作りたかったのだろう。

もちろんこの原案が昇華することは無かったのだが、この重力ベクトルを操るアイディア自体は、約10年後の2008年に世に送り出した『ソニックライダーズSSS(Wii)』に生かされている。

 

さて重力を操るといえば有名どころで『GRAVITY DAZE』があり、中央アジアを彷彿させるエスニックな世界観やキャラの容姿など、個人的にかなり"好き"が詰め込まれた作品だ。アクションゲームはキャラ移動の自由度が高いほどカメラの制御も大変なのだが、このゲームはカメラの方向を操作することで重力方向を決めて、それを攻撃や移動のアクションにかえる。そのアクションから生み出される浮遊感や落下感などの見せ方が素晴らしく、アクションゲームのゲームデザイナーなら学ぶことが多い作品だと思う。しかし"方向"を見失う瞬間は多々あり、そうなったときはカメラを操作するのではなく反射的に頭を傾けてしまう。その結果酔ってしまうのだ。。。

まあ開発者視点だと「そうなるよね」と思う瞬間は多々あるのだが、それらを差っ引いても「よく作ったなー!」と感心してしまう。こういった前衛的な作品を作り続けて、IPを確立できている開発チームが、素直に純粋にうらやましいと思う今日この頃である…。